JAI製ラインスキャンカメラ Sweep SW-16000M-CXP4A と FPGA ベースの演算処理により、MSTVision 社開発のフォトメトリックステレオ・ラインスキャンシステムがこれまでにない処理速度を実現
課題
はじめに、フォトメトリックステレオとは、ある被写体やシーンをカメラの位置や角度は変えずに、照明を様々な方向から当てて撮影した複数枚の画像を用いて、対象物を観察する技術です。個々の画像には、受けた照明によって対象物の表面が示した、それぞれ特徴的な輝度が記録されます。それらの画像に高負荷の演算処理を行うことで、付加情報を含んだ画像データが生成されます。特に、表面起伏 (表面の向いている方向) とテクスチャの特性 (アルベド) を個別に分析することが可能なため、従来の画像では見過ごされがちだった傷、へこみ、エンボス加工の不具合といった微細な欠陥も、高いコントラストで可視化することができます。
ただし、マシンビジョンの世界におけるこの技術の実用面には、大きな課題がありました。複数の画像を精密に同期させるうえでは、対象物が画像の取得中に動かず静止している場合が最も容易です。そのため従来のフォトメトリックステレオシステムでは、使用できる速度に制限があったり、速度を補おうとすれば多くのカメラや外部演算ユニットが必要とされてシステム構成が著しく複雑になったりと、高速生産プロセスへの組み込みは非常に困難だったのです。こうした理由から、コンパクトで拡張性が高く、かつ高速でありながら精度や安定性を損なうことなくリアルタイムで結果を出力できる、フォトメトリックステレオ法のソリューションが待ち望まれていました。
ラインスキャンカメラを用いて、この手法を高速かつ効率的に運用するには、異なる照明方向の画像を一度の走査内で撮影する必要があります。フォトメトリックステレオシステムにおいては、照明チャネル間のわずかなタイミングのずれでも、得られる表面情報の計算結果に直に影響を及ぼすからです。同時に、システムは極めて高いデータレートをリアルタイムで処理でき、経済的にも実現可能であり、また様々な用途に柔軟に適応できることも必要です。つまり、カメラの制御、照明の制御、および FPGA ベースの画像処理、これらが緊密に統合されていることが、システムには要求されるのです。
ビジョンシステムの概要
MSTVision社 (ドイツ) は、同社独自の「マルチチャネル」テクノロジーを用いた時間多重化により、フォトメトリックステレオ手法の従来課題を解決する、ラインスキャンカメラソリューションを開発しました。「マルチチャネル」技術による画像取得、FPGA ベースのフォトメトリックステレオ処理、そして弊社の高速カメラ Sweep SW-16000M-CXP4A を組み合わせることで、これまで達成不可能だったプロセス速度での連続検査を可能にしたのです。
また同社は、このビジョンシステムに求められている速度と光の照射強度に対応するため、フォトメトリックステレオ用に特化した高性能ライン照明も独自開発しました。「フォトメトリックステレオラインライトMST-PSL」と名付けられたこのライン照明モジュールには、LED ドライバが内蔵されており、4つの指向性チャネルから特定の傾斜角度で光を照射することができます。この統合型照明ユニット MST-PSL は、用途に応じてバックライトやフロントライトといったような、標準タイプ外の照明とも柔軟に組み合わせることが可能です。
ソリューション
MSTVision 社のフォトメトリックステレオソリューションを実現可能にした重要な点は、弊社 JAI 製のラインスキャンカメラである、Sweep シリーズの SW-16000M-CXP4A を採用していることです。このカメラが誇る高いラインスキャンレートとデータ転送速度に支えられて、システムは高速稼動を要する現場において、潜在能力を最大限に発揮できるのです。JAI のカメラは、そのセンサ品質と産業用としての信頼性、そして優れたサポート体制により MSTVision 社から非常に高く評価されています。同社のフォトメトリックステレオソリューションにおいては、カメラの持つ時間特性が安定していることと、FPGA ベースの演算処理プロセスへの優れた統合性が、特に採用への決め手となりました。JAI の Sweep SW-16000M-CXP4A ラインスキャンカメラは、マルチチャネル照明と同期したフォトメトリックステレオ法のビジョンシステムにとって、まさに打ってつけのパフォーマンス性とコントロール性を有したカメラなのです。
MSTVision 社のシステムにおいてこのカメラが選ばれたもう一つの決定的な理由は、16K 解像度で最大 277 kHz という極めて高いラインレートです。同社によれば、これにより最大 4.5 GB/s のデータ転送が可能となり、同社のフォトメトリックステレオシステムは、従来は達成不可能だった領域にまで飛躍的な高速化を遂げました。他にも、優れたS/N比や、安定した時間特性を示す挙動、そして最大スループットでも高い信頼性を維持したリアルタイム処理を可能にする CoaXPress インターフェースが、このカメラの採用理由として挙げられます。JAI Sweep SW-16000M-CXP4A ラインスキャンカメラをベースにした MSTVision 社のフォトメトリックステレオソリューションは、生の画像群はもちろん、それらの画像から計算されたフォトメトリックステレオの結果データもリアルタイムで出力します。
このシステムは原則として、連続して移動する物体の表面について詳細な情報を取得することが求められる、高速インライン検査向けに開発されました。薄い帯状の金属、フィルム、紙などといった、ウェブ素材の品質検査が主な適応分野です。本システムは、非常に高速なライン工程でありながら、検査対象物のごく微細な表面構造や欠陥、形状の歪みを確実に検出する必要がある場合に特に適しています。 従来のラインスキャンカメラシステムや 2D 画像処理と比較して、MSTVision 社のシステムならば表面の形状や質感をはるかに精密に解析することが可能です。
オリバー・グレーフ氏:「JAIとMSTVisionのこの共同開発により、フォトメトリック・ステレオ・ラインスキャンソリューション向けのコンパクトかつ拡張性の高いシステムが誕生しました。このシステムは、極めて高いデータ処理速度に対応しつつ、卓越した詳細度を備えた即座に活用可能な結果を提供します。」
JAIのカメラについて
弊社のモノクロラインスキャンカメラ Sweep SW-16000M-CXP4A は、様々な理由から今回のタスクに最適な選択です。まずこのカメラは、1 x 16,384 モノクロ画素を備えており、16K ラインスキャン解像度で最大 277 kHz という卓越したスキャンレートによって、最高速度でも対象物の特徴を鮮明に捉えることが可能な、幅広い用途に対応できるカメラです。
さらに、高速データ転送を実現する CXP-12 対応の CoaXPress 2.0 インターフェースを搭載しているため、画像取得からデータ処理までの流れがスムーズで、速度を求められる場合においても信頼性の高いシステムを構築できます。
他にも、5 µm 角の画素による高感度特性や、照明やロータリーエンコーダーなどの機械周辺機器と柔軟に同期できる多目的 GPIO およびトリガオプション、さらには優れた耐衝撃性 (80G) および耐振動性 (10G) など、数多くの特長を備えています。こうした点から、Sweep SW-16000M-CXP4A は多様な業界のニーズに応える強力な基盤となるカメラです。
SW-16000M-CXP4A をさらに詳しく知るには、[こちらをご覧ください]。
MSTVisionについて
MSTVisionは2016年に設立され、高度なマシンビジョン分野における専門パートナーとしての地位を確立しています。ドイツのギンズハイム=グスタフスブルクに拠点を置く同社は、実現可能性調査や光学設計から、CPU、GPU、FPGAベースのシステム開発に至るまで、包括的な開発サービスを提供するほか、独自の高集積技術や画像取得モジュールも提供しています。特に、フォトメトリックステレオ分野における革新的なソリューションや、高性能マルチチャンネルシステムに注力しています。さらに、MSTVisionは、マシンビジョンプロジェクトの全段階において、綿密な市場調査や実践的な技術トレーニングを通じて顧客を支援しています。
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