生命科学分野、産業分野向けの高度な顕微鏡観察用カメラソリューション

イントロダクション

インターネットの普及などにより「世界はますます小さくなってきている」というフレーズをたびたび耳にします。顕微鏡での詳細な観察が必須となるビジョンシステムが増えている昨今、ビジョンシステムの設計者にとっては、特別な意味をもって聞こえるのではないでしょうか。以前は1人の作業者が光学顕微鏡を使って手作業で行っていた工程も、今はデジタルカメラと高度な画像取り込み/解析ソフトウェアを組み込んだ顕微鏡観察の手法により、かつてない速さと正確さ、高い精度を実現しています。

顕微鏡関連のマシンビジョンシステムは、半導体検査をはじめ、材料科学、不良解析や品質保証などの産業分野のほか、生命科学の分野でも幅広く活躍しています。

多くのデジタル顕微鏡システムにおいて、用途に応じた目的を実現するには、色情報を取り込んで解析することが不可欠です。システムに組み込まれているカメラは、システムの「目」として、システムの「頭脳」であるソフトウェアが機能を実行するために必要な空間情報と色情報を、適切なレベルで提供できなければなりません。

本ドキュメントでは、デジタル顕微鏡ソリューションやさまざまなカメラ機能を利用して、貴社の装置用途の要件を満たす方法について詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

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Chapter 1 カラー顕微鏡システムの種類

カラー顕微鏡システムの種類

現在カラー顕微鏡関連画像処理システムは、いくつかのカテゴリーに分類されています。以下は、最も普及しているシステムです。

  • 染料や色素を利用し、サンプルに光を当ててカラー画像を取り込むという、従来の明視野技術を採用したシステム:
    産業分野のシステムによっては、可視情報と不可視情報の詳細を同時に解析するために、近赤外波長だけでなく、暗視野照明の技術も実装している場合があります。

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    明視野顕微鏡技術
  • 蛍光発色を利用したカラー顕微鏡システム
    この技術は、有機化合物と無機化合物のどちらにも利用でき、生命科学分野で最も普及しています。1つまたは複数の蛍光色素(蛍光物質)を生体サンプルに加え、励起光源から照射を受けたときに、特定の構造や対象物が特定の光波長(色)を放出する状態を観察します。

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    蛍光発色を利用したカラー顕微鏡システム
Chapter 2 カラー顕微鏡観察で生じる課題

カラー顕微鏡観察で生じる課題

カラー顕微鏡検査システムの設計者は、目的とする用途によって、さまざまな課題に直面しています。重要な検討課題のいくつかを見ていきましょう。

  • 色再現性と判別性

    多くのアプリケーション、特に色素や染料を用いる生命科学分野の用途で適切な解析を行うには、特定の色を検出し、類似の色と明確に判別することが不可欠です。

    Unstained Stained
    サンプルを染色する前(右)と後の明視野像(出典:オリンパス)
  • 感度
    顕微鏡観察アプリケーションでは、多くの場合、比較的低照度な環境下での動作が要求されます。特に、励起光を吸収することによって放出される蛍光の強度が低下してしまう、蛍光分析用途が挙げられます。明視野観察でも、光毒性を最小限に抑え、検査対象となるサンプルの損傷を防ぐため、場合によっては光量を抑えることが必要になります。

  • 画像の鮮明さ、精細さ
    顕微鏡やその他の光学装置を利用すれば、必要な倍率で拡大した画像が得られますが、必ずしも精細で鮮明な画像が得られるわけではありません。精密な位置決めや測定が要求される用途では、マシンビジョンの検出装置やカメラは、ぼやけやモアレなどの画質劣化を最小限に抑えたカラー画像を提供することが必須となります。

  • 色強調(特に赤色)
    生命科学分野で使用される色素や染料、蛍光物質の多くは赤色です。顕微鏡関連画像処理システムでは、本来の感度でも、特定の色を強調した場合でも、スペクトルの赤色に関する性能が特に優れている必要があります。赤色のチャンネルの感度が強化されていることは、近赤外光(NIR)帯域での不可視情報が要求される産業用途においても有用です。

    Skin Cells Bright Field
    明視野顕微鏡による皮膚細胞の画像
  • 低ノイズ
    感度と鮮明さの両方の課題に関わることですが、顕微鏡関連画像処理システムでは、低照度条件下での露光でも有効な解析ができるように、十分な「クリーンさ」を保ち、ノイズを最小限に抑えることが強く求められます。

  • ダストや異物(FOD)
    電気的なノイズによって画像に仮想の「汚れ」が付くことがありますが、顕微鏡観察アプリケーションでは実際の汚れに気を配らなくてはなりません。粉塵粒子や糸くずなどのいわゆる異物(FOD)がカメラの光路に侵入すると、顕微鏡観察アプリケーションの有効性が著しく損なわれる可能性があるからです。特に明視野顕微鏡では、センサや光学ガラスで異物が目立ちやすい傾向にあります。これは、細胞数カウントなど、ダストやFODが誤ってカウントされる可能性がある用途において、重要なファクターとなります。

  • フレームレート
    ウェハ検査などの産業用途では、要求されるスループットを満たす高フレーレートが求められますが、生細胞イメージングをはじめとする生命科学分野では、経時観察に要求される「リアルタイム」での取り込みか、それ以上の高いフレームレートが必要となります。さらに、複数の画像のスタック処理(重ね合わせ処理)を必要とする強化被写界深度(EDoF)のような技術においても、高フレームレートのメリットを享受できます。

  • 実績のある解析ツールとの互換性
    多くのシステムでは独自開発の解析ソフトウェアが利用されていますが、顕微鏡関連画像処理システムの多くは、市場で入手できる顕微鏡用途に特化したサードパーティ製の画像取り込み/解析ソフトを活用しています。加えて、市販のソフトウェアやオープンソースのソフトウェアと容易に統合して、目的の機能を使えるようにできるかどうか検討することも重要です。

Chapter 3 カラーカメラの課題を解決するには

カラーカメラの課題を解決するには

前の項からもわかるように、顕微鏡観察をベースとした効果的なカラー画像処理ソリューションを構築するには、適切なカメラ技術を利用することが重要な出発点となります。これは、大規模なマシンビジョンシステムに画像処理ソリューションを組み込む場合だけでなく、シンプルな研究室向けの設備の構成要素であっても同様です。

  • 基本的なシステム要件には、ベイヤー式カラー技術で対応
    色に対する要求がそれほど厳しくないシステムの場合は、ベイヤー配列のカラーフィルタを搭載した標準的な単板式カメラ(検出装置)でも、十分な成果を得られる場合があります。もちろん、重要な課題を念頭において、色強調機能や色空間変換機能といった高度な機能だけでなく、低ノイズや高感度、適正なフレームレートを備えたカメラを探すことも必要です。加えて、主要な顕微鏡ソフトウェアパッケージと統合できることも重要になります。

    近年、ベイヤー式カラーカメラの性能は大幅に向上し、基本的なカラー顕微鏡検査システムの設計者に多くの優れた選択肢をもたらしています。特に、ソニー製Pregius™シリーズのような最先端のCMOSセンサ技術を基盤とした新世代のカメラは、幅広い用途のニーズに応える高フレームレートで低ノイズのカラー画像を実現しています。

  • 高度な用途には、多板式のプリズム分光式カメラ
    アプリケーションに高い価値をもたらす最高水準の色再現性と空間分解能を備えた、より高度なカラー顕微鏡検査システムを構築するには、要求に応えられる、より高度なカメラ技術の採用を検討する必要があります。

    Fluorescence
    赤、緑、青の蛍光物質を使った蛍光画像

    三板式のプリズム分光式カメラ(3CMOSまたは3CCD)では、高品位の光学プリズムにより、入射光がスペクトルの波長(Red、Green、Blue)に基づいて分離され、3枚のセンサで個別に受光されます。補間処理によってRGB値を推定することが必要なベイヤー式カメラと比べ、わずかな差異の判別が求められる場合に(下記参照)、優れた色再現性が得られます。結果として、実効感度も高くなります。その理由は、ベイヤーフィルタのマトリクスの場合、個々の画素に到達する波長の2/3が実質的にブロックされるのに対して、プリズム分光式カメラでは、サンプルが発する光のほぼ100%を捕捉されることにあります。損傷しやすいサンプルへのストレスを軽減するため、光量を抑えた環境下でも全体のS/N比を高くして、より良好な画質を得ることができます。

                     ベイヤーカラー方式 vs. プリズム技術

    Bayer Prism Compare
    ベイヤーフィルタの場合、各ピクセルは1つの色の帯域(R、GまたはB)のみを捉えます。ピクセルのRGB値の他の2つは、隣接するピクセルで捉えたデータを使用して「補間」されます。一方プリズム技術(右)では、正確に位置合わせされた3枚のセンサに入射光を分離するため、補間処理によって精度を低下させることなく、各ピクセルで真のRGB値を捉えることができます。
Chapter 4 JAIの顕微鏡観察用カメラソリューション

JAIの顕微鏡観察用カメラソリューション

主要な顕微鏡ソフトウェアパッケージとの機能統合だけでなく、JAIの持つカラー画像処理とプリズム技術の高度なノウハウと豊富な実績で、高度なカラー機能を備えたシステム構築のためのさまざまな選択肢を顕微鏡システムの設計者に提供します。

JAIの多板式プリズム技術は、同グレードのベイヤー式カラーカメラ(詳細は「Tech Guide: カラーイメージング」参照)に比べて、高い色再現性、わずかな濃淡の判別、低照度下での高い感度、微細な部分の鮮明さをより高いレベルで提供します。これにより、生物学分野であれ産業分野であれ、顕微鏡システムの設計者は、従来のモノクロカメラや単板式のカラーカメラでは不可能だった方法で、顕微鏡によるサンプルの画像解析を可能にするシステムが構築できるのです。JAIのプリズム分光式カラーカメラは、3方向ダイクロイックプリズムに取り付けられた3枚の160万画素のCMOSセンサまたは320万画素のCMOSセンサを搭載しています。これにより、ベイヤー補間アルゴリズムで生じる色情報の平均化や推定なしに、各ピクセルについて正確なRGB値を提供できます。

JAIの顕微鏡観察用カメラソリューションでは、Apexシリーズのプリズム分光式カメラを8機種用意しています。解像度は2種類、それぞれIRカットフィルタあり・なしモデルがお選びいただけます(詳しくは下記の「Redチャンネルの感度を拡張」の「フィルターなし」モデルについての解説をご覧ください)。これらのカメラは、高度な顕微鏡観察用途向けに調整されたさまざまな機能を備えています。

  • 主要なサードパーティ製ソフトウェアとの機能統合
    顕微鏡システムによっては、独自開発の解析ソフトウェアで構築することもできますが、多くのシステムや研究室では、市場で入手できる顕微鏡用途に特化した画像取り込み/解析ソフトを活用しています。JAIの顕微鏡観察ソリューションは、どちらの場合にも対応可能。標準のGenICam-compliant準拠のファームウェアは、幅広いソフトウェア開発ツールと機能統合されています。さらにApexシリーズのカメラは、世界で最も広く使用されている二大顕微鏡ソフトウェアパッケージであるImage-Pro®とµManagerを正式サポートしています

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    Image-Proは、Media Cybernetics社(アメリカ合衆国メリーランド州ロックビル)の画像解析ソフトウェアで、顕微鏡ベースの画像をより簡単にキャプチャし、処理、測定、解析、共有することができます。専用設計のドライバを利用することで、ApexシリーズのカメラからImage-Proソフトウェアに画像をシームレスに受け渡し、またImage-ProからApexカメラが備える特定の機能を制御することも可能です。

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    オープンソースの非商用ソフトウェアソリューションを希望するお客様向けに、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のVale Labが独自に開発し、現在Open Imaging社で開発が継続されているµManager(Micro-Manager)用のデバイスアダプターをご用意。このデバイスアダプターを使うことで、Apexシリーズのカメラは、顕微鏡イメージングで利用されている主要4メーカー(ライカ、ニコン、オリンパス、カールツァイス)の顕微鏡をはじめ、さまざまな周辺機器(ステージ、フィルタホイール、シャッタなど)と十分に連携することが可能になります。

  • Redチャンネルの感度を拡張

    多くの顕微鏡関連画像処理システムでは、いくつかの理由により、可視領域を超えた波長帯域の情報を必要とします。例えば、カラーバランスに対する近赤外光の影響を避けるため、ほとんどのカラーカメラでは一般に670~700 nmをカットしていますが、蛍光顕微鏡システムでは通常その範囲を超える発光波長帯域の蛍光体が使用されます。そのため、捕捉できる「濃赤色」の蛍光体が大幅に減少する可能性があり、特定の画像において詳細な情報を得ることが困難になります。同様に、産業分野の検査システムでは、より微細な欠陥を解析するために、近赤外光の特性を利用して、プラスチックを通して捉えたり、材料の表面下を捉える必要があります。
    JAIの顕微鏡観察用カメラソリューションでは、通常のIRカットオフ波長を取り除いたモデルを用意していますので、濃赤色や近赤外領域の波長まで感度を拡張することが可能です。この「NF」モデルは、特定の用途向けに適切な画像処理コンポーネントを構成する際に、非常に高い柔軟性を提供します。

    Extended Red Spectral With Fluorophore Overlay 650Px
    JAI顕微鏡観察向けカメラモデル(本カメラシリーズ)の分光感度特性と一般的なタンパク質に見られる蛍光領域を、発光波長帯域として重ね合わせた図。
  • 色強調機能

    JAIのすべての顕微鏡観察用カメラは、標準モデルか赤色の感度を拡張したモデルかに関わらず、より精度の高い解析を容易にするために、特定の色を強調する機能を備えています。3種類の原色(赤、緑、青)と3種類の補色(シアン、マゼンタ、黄)の6色から1色を選んで強調できます。各色を最大2倍まで強調することが可能です。例えば医療用途では血液の赤色と周辺の組織をより明確に見分けたり、一般的な蛍光顕微鏡観察用途では特定の蛍光体を見分けることができます。本機能は、目的の物質をより「目立たせる」際に大きく寄与します。

  • 低ノイズホワイトバランス

    顕微鏡観察アプリケーションでは、使用している照明の種類に対して、カメラのホワイトバランスが適切に調整されているかを確認することが出発点となります。一般的なベイヤー式カラーカメラでは、R/G/B各チャンネルのうち一番感度が得られるチャンネルに合わせて、その他の2チャンネルのゲイン(増幅)を上げ、ホワイトバランスの調整を行うのが唯一の方法です。ただし、ゲインを上げると、チャンネル信号だけでなくノイズも増加します。これは、低照度条件下で使用する一部の低照度顕微鏡観察アプリケーションでは、重大な問題となる可能性があります。

    JAIの顕微鏡観察用カメラソリューションのプリズム分光式カメラは、ゲインとシャッタ速度を各センサで個別に調整することができます。したがって、ホワイトバランスをシャッタ速度によって調整することも選択肢に入るため、基準とするチャンネル(センサ)の信号レベルに対してその他の2チャンネルの露光時間を長くする、または短くすることでホワイトバランスを調整する方法も取ることができるのです。露光時間が長くなるとノイズがわずかに増える可能性もありますが、ゲインを適用した場合と比べてはるかに小さいものです。

  • ダストの抑制を強化

    JAIのすべての顕微鏡観察用カメラは、FOD(異物)を抑えて高画質を保証するため、慎重に検査・認証されています。ただし、一部の用途では、標準的なカメラよりもさらに厳しいダストやFODの抑制が要求される場合があります。このような用途向けに、より厳密なスクリーニング検査を受けた「LSX」モデルを用意しています。

  • プラグアンドプレイを備えたUSB3 Visionインタフェース

    JAIの顕微鏡観察用カメラソリューションで利用可能なカメラは、すべて最新のUSB3 Visionインタフェースを採用しています。USBは、帯域幅とプラグアンドプレイの互換性による容易さから非常に優れたインタフェースで、顕微鏡関連画像処理システムで幅広く利用されています。320万画素モデルは、フル解像度を38.3 fpsで出力可能。産業分野の検査システムや生細胞イメージング、被写界深度が大きい環境での観察など、高スループットが要求される用途に対応します。

データシートなどの詳細な製品情報については、このWebサイトのApexシリーズ顕微鏡観察用カメラのページをぜひご覧ください。

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